第72章

入寮したばかりの頃、アリシアの部屋は学院の標準仕様だった。公爵邸のような贅沢さはないが、決してみすぼらしくもない。あの法外な寮費に見合うだけの、きちんとした造り。

――けれど今は、すっかり別物になっている。

もともと彼女は部屋の一角を実験区画として整え、主に魔薬の煎じに使っていた。いまは学院の実験室を借りているとはいえ、こちらを撤去する気はさらさらない。むしろ時間が経つほど、寮の調度と噛み合わないものが増えていった。魔薬と材料を収める棚、無造作に置かれた設計図、用途不明の部品――全体として、どうしても雑然として見える。

グリスナがこの部屋を見たら、怒るだろうか。

アリシアの脳裏に、公...

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